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ある絵のイメージでアラシンを書いてみたいと思ったのですが、当の画集が押入れの奥にしまいこまれてまして、出すのが面倒だったのでうろ覚えで書いてみました。
サイトの方にUPしようかと思いましたが、SSにもならないくらいの短さの文だったので、ためしにこっちにのせてみたわけなんですが。
今思いましたが、拍手の方でもよかったかな……。
ちょっとどころではなく意味不明なところもあって、なんだかいろいろこなれきれてない感がしますが、もしよろしければ、以下の「つづきはこちら」から読んでやってくださいまし~。
【群楽の下】
アラシヤマはずっと駆けどおしであった。
息をするたびに左足の銃創が痛む。見れば、じわじわと布の上に血が染み広がっていた。
足の機能に支障をきたすほどではないと判断したアラシヤマは傷口をきつく縛ったが、思ったよりも深めにえぐれていたのかもしれなかった。
(なんで、あんな所にガキがいたんや)
旧式のマシンガンを手にした見回りの男をやりすごそうとしたが、男の名を呼びながらつたない足取りで走ってきた子どもと目が合った。
うす暗闇の中そうそう視線が会うはずもないが、息をのまれたように子どもは動きを止めた。
その様子をみて不審に思ったらしい男が子どもに何か問いかけた隙をねらって、アラシヤマは銃に手をかけたが、唯々子どもが凍りついたような表情で自分を見ているのが視界のすみに入り、一瞬反応が遅れた。
それに気づいたアラシヤマは舌打ちひとつして身をひるがえすと、背後から弾丸が何発も飛んできた。応戦してもかまわなかったが、どうもそのような気にはなれず、ただひたすら駆けた。
夜が明けかかる密林の上方で鳥たちがけたたましく鳴き交わす声がアラシヤマの神経を苛立たせた。どうやら彼らは、アラシヤマが放った火と植物の燃える煙から逃げて来たらしい。
鳥達の声から逃げるようにアラシヤマは足を速めると、額に油汗がにじみ始めた。
(できるだけ早う、回収ポイントへ着かんと……)
はやる気持ちとは反対に、左足はどんどん重くなってゆく。銃創からくる熱も体全体に回ってきはじめたらしかった。
アラシヤマは白い錠剤を口に放り込み、歯で噛み砕いた。
朝露をふくんだ水っぽい大気の中を急ぎ足で歩くうちに、どこからか芳香が流れてきた。
頭上を見上げると、緑色をした心臓形の葉と白い花をつけた木が天蓋のように繁っている。
アラシヤマは、袖で額の汗を拭った。
陶然とするような甘さの中にも清々しさが混じった香りは、幾分ながらも身の熱を和らげる気がした。
手を伸ばし、白い花を枝からちぎると、切り口から出た汁でアラシヤマの指が汚れた。
「これ、案外あの人に似合うかもしれまへんな」
長い黒髪に、白い花を一枝。甘い香りと毒のある瞳。
(――悪くはおまへん)
そう思った自身の思考を、どうかしている、と哂ったアラシヤマは花を捨てようとした。
しかし、思い直したように花をポケットに入れると、再びその背は熱帯植物の木々が重なりあう中へと消えた。